八万中学校1年生第1回学年全体人権学習(5月17日)報告

 4月入学。GWをはさみ、そして約1ヶ月。

 できるだけ早い時期にと、5月17日、念願の、1年生による学年全体の人権学習を開くことができました。テーマは、「自分を語る」。なぜ、自分を語る必要があるのか。自分を語ることなくして、人を知ることはない。互いを知り合うことなくして、認め合うこともない。認め合うことなくして、真の仲間づくりにはなり得ない。仲間づくりが人権学習の基本であることを考えれば、これは避けて通れない大切な道であることを、全体に話しました。

 2年前の「人権を語り合う中学生交流集会」のダイジェスト映像を全体で視聴します。そこには、コロナ差別、臓器提供、見ため差別について、「自分を語る」中学生の姿がありました。

 その姿と、自分を重ねるように、全体学習は始まっていきました。

1.中学生になって約1ヶ月。入学する前は、どんな気持ちでいましたか。入学してから1ヶ月は、どんな気持ちで過ごしてきましたか。

「中学校に入学する前は、中学校楽しみだなってワクワクしていたんですが、入学して1週間ぐらいは緊張して不安でいっぱいだったんです。なぜなら仲のいい友達が一人も、一人もっていうわけじゃないですけど少ないし、新しい環境に慣れてなかったので。だけど仲が良くなくても話しかけてくれるクラスメイトとかたくさんいたし、だんだん仲良くなって楽しくなってきて、それからは中学校に来るのが楽しくなってきて嬉しかったです。それがこれからも続いていったらって思います。」

「最初の入学前は八万小学校の中で、八万南の人は怖い人ばかりっていう噂がたっていたので、八万南の人はどんな人がいるんだろうと少し不安に思うことがありましたが、でも今はクラスの中でもたくさん友達ができていてすごく楽しい1年間になりそうだなとすごくワクワクしています。」

「入学する前は他の学校の人たちと交ざって学習することにとても不安を感じていました。いじめられたらどうしようや、きっと他の学校の人は怖いと思っていたからです。入学してからは分からないことを教えてもらったり、話しかけたりしてくれて、とてもやさしいと感じました。入学前に思っていたことは思い込みだったということに気がつきました。」

「入学する前はワクワクドキドキする気持ちで、どんな子がいるのかな、新しい友達はできるのかなと、期待と不安を背負っていました。でも入学して他の学校だった子はすごくやさしいし、いっぱい話しかけてくれたり元気よくあいさつをしてくれたりしました。友達できるかなと不安に思っていたけど新しい友達がたくさんできて今は楽しい学校生活が送れています。でもまだあまり話せていない子もいるので話したいなと思っているし、今の友達とももっと仲良くなりたいなと思って、いま学校生活を送っています。」

 思い込みで決めつけていた1年生の姿がありました。やはり出会うこと、つながること、直接関わることだと思います。知らないことは、差別や偏見につながる可能性があるからです。そのことを生徒の発言から実感する時間となりました。

2.あなたのこれまでの人権についての学びを教えてください。これまでに小学校や家庭,ネットやテレビ、本などから、どんな学びをしてきましたか。また、そのことについてどう思いましたか。

「水俣病について調べたりしてタブレットで調べたりして実際に水俣病に罹った人のことを聞いたりして、やっぱり環境問題から始まってるんだなと思いました。水俣病は水銀で病気に罹ってしまうので、工業から魚から人間ていう流れになっていると聞いたことがありました。工業廃水は体にとっても悪く、後遺症になることが分かりました。」

「小学校の6年生は力を入れて部落差別を主に学んできました。今まで部落差別については知らず、歴史を学習したところにいました。授業をしてからは本などで、部落差別について読んでみたり、なくしていく発言や行動をしようと思いました。」

「僕は小学校で、コロナやハンセン病について学びました。コロナやハンセン病の差別はよく似ていて、隔離をしたり、あの家の親はハンセン病に罹ってるからその子と遊ばれんとか、そういう差別があるので、僕はダメだなと思いました。」

「小学校の時、コロナ差別やカカオ豆の児童労働、部落差別などを習って、とても心が締めつけられました。なぜ差別が起こるのか、それをどのようにして解決すればいいのか、僕はいつも人権の勉強が終わったときに考えます。」

「僕は小学校では部落差別や男女差別、原子爆弾、神風特攻隊についてのいろいろな授業がありました。特に僕は原爆は何万人、何十万人も亡くなっていて、決して忘れてはいけないと思いました。」

「小学校の授業では、差別、上下関係などのことを学んできました。でも小学校で習ったような内容ではまだまだ差別やいじめはなくならないと思いました。なぜなら真剣に考えている人もいれば全然考えない人もいるからです。それとまとめながらで書いた文章が自分一人では絶対にできない大きなことを書いている人がいるからです。なので小さいことでもいいので、自分自身ができること、身近なことを少しずつ実行していこうと思いました。」

「小学校5・6年で水俣病の差別や部落差別、男女差別などについて習ってきました。私は差別はいけないと知っているからできるだけ差別をしたくないですけど、差別をしたがわになってみると、差別をしてしまうかもしれないなと思います。例えば水俣病の患者の家族から手で釣り銭をもらわなかったり、バスの中で避けたりしたこと。これは近づいたら移るかもしれないと思い込み、知らなかったから行動したと思います。差別した人も、自分の家族は水俣病になりたくないと思って守るためにしたかもしれないから、差別や人権について正しい情報を知りたいなと思います。」

「私はこれまで部落差別やいじめ。コロナ差別などいろいろなことを学びました。そこから思ったことは、いろんな人がいて知っていくなかで、その人の短所が見えてくることもあるけど、それも受け入れて、長所をどんどん見つけていく方が、楽しいし友達も増えていって自分の考えも深めれるということです。」

「人権について学んだことは、人間とは互いに思いやって支え合うはずの生き物なのに、世の中には昔から今まで長く続く差別や人権があることを学びました。そしてその差別は人が人を苦しめる絶対にあってはならないものだと学びました。それをなくすためには差別と闘う行動をすることが一番大切です。家族やテレビから差別について聞き、身のまわりのすぐ近くに差別はあって、実際に町で差別と闘う横断幕を見たりして、差別はすぐ近くにあって、今も少しずつの小さいことが大事だと考えました。」

「私が小学校で学んだ差別とかは、女性や人種、病気の差別について学びました。私が学んで思ったことは、最初は自分には身近なことではなくあまり関係はないと思っていたけれど、ニュースを見たり、ネットや本とかで調べてみると意外と身近によくあることで、日本のとか世界でも差別をする人はたくさんいるんだなと思いました。」

 水俣病の問題も含め、百人の被害者がいれば百人の現実があります。大切なのは、一人一人の思いをていねいにくみ取ること。学習を進めれば、分かったようなつもりになっていても、実は分かってなかったということに気づきます。ハンセン病回復者キムさんの、「正しく知って正しく行動すること」を実践に移せば、コロナ差別も起こらなかったのではと思います。

3.人権を考えるうえで大切なことは,身近な出来事です。勝手な「決めつけ」や「押しつけ」、「思い込み」で、人に嫌な思いをさせてきたり、させられてきたことはありませんか。人権侵害(差別やいじめ)を身近に感じたことはありませんか。

「4年の頃、牛乳が飲めず、給食を完食をしたら花丸が5個つくので飲め飲めと言われましたが、しかし飲めませんでした。だから鬼ごっこやドッヂボールで仲間はずれにされてとても悲しい思いをしました。」

「私は小学校のときに家の用事で学校を何日か休んでいたときがあって、そのときに学校で友達に私がコロナに罹ったんじゃないかって噂をされてとてもしんどい思いをしました。なのでこの思いを知っているからこそ、そういう決めつけはしない方がいいなってあらためて思いました。」

「私が身近に感じた人権侵害とかは、小学校低学年のときやけど、外に行ってドッヂボールとかをみんなでしよったら、お前が弱いから負けたとか、お前ざこやから他のチームに行ってってみたいな感じで他の人が言っていて、それって差別とかじゃないんかなと思いました。」

「私が小さいときに、少し嫌な気持ちを持ったことがあります。私が何か友達との大切な約束を破ってしまい、相手を怒らせてしまいました。何度か謝りましたが、その次の日から少しの間、相手の子が他の友達にコソコソと私のことが嫌いといったようなことを言っていました。そのときの経験があるからこそ私は人権問題に真剣に向き合っていこうと思いました。」

 相手の立場に立って、というけれど、それができない一面が人間にはあります。しかし、本当に相手の立場に立って考え、人をのけ者にしない素晴らしい一面も人間にはあります。自分がどう考え、何を選ぶかです。人は間違いに陥ってしまう弱さを持っています。だからこそ、もっと学んでいかなければならないのではないでしょうか。

4.目前に中間テストや体育祭を控えていますが、あなたはこの学年をどんな学年にしていきたいですか。この1年、あなたはどんな人間をめざしますか。

「私はこの1年間や中学校3年間を通して、何か絡まれることがあったりしても、仕返しをしたり、裏で暴言を吐かない人間を目指したいです。そしてどんな学年にしていきたいかというと、みんながみんなのために優しいことで笑っていける学年、クラスにしていきたいです。体育祭などもみんなで仲良く協力してやっていきたいし、勉強などで分からないことがあったら、分かる人と協力して効率よく勉強して、みんなと仲良くしていきたいです。」

「私はこの学年を、誰も悪口を言わない学年にしたいです。悪口を言わないってことは誰でもできると思うので、まずその悪口を言わないっていうところから始めたいと思います。そしてこの1年間人から尊敬される人間になりたいです。尊敬されるっていうのはすごいことをやるっていうことじゃなくて、いつも当たり前にできていることを毎日当たり前にやるっていうことだと思うので、毎日そういうことを続けていきたいと思います。」

「私はテストや体育祭を機に、みんなで協力していじめや差別のないようにしていきたいです。○○さんは勉強ができないから一緒に勉強をしたくないや、○○さんは運動ができないから負けたなどの悪口を絶対言わないようにしていけるような学年にしていきたいです。また私は人権の問題についてもっと知っていって、みんなに優しくできるような、そして仲良くできるような人間になりたいと思いました。」

「この金曜日に体育祭の練習が始まっていくと思います。その中で運動が苦手な子、得意な子がいると思います。しかしその苦手な子、得意な子を分けて差別するのではなく、今日こうやって人権について考えて話し合った仲間なので、みんなで協力し笑い合っていける学年で、体育祭を楽しんでいきたいと思います。」

「僕はこの学年を助け合い、協力し合う学年にしていきたいです。この目標は初めは身近な人から、そして最終的に学年全体に広げていきたいです。そして僕はこの目標を果たすために、自分自身が助け合い協力し合えるような人間になれるようにしていきたいです。」

 最後に私から、昔体育祭の全員リレーで起こったハプニングについて話をさせてもらいました。真剣に聴き入る1年生のまなざしは、真剣そのものでした。

 今回、たくさんの1年生が自ら手を挙げ、緊張のなかマイクを握りしめ、自分の言葉で自分の思いを語ってくれました。なかには、もうすでに原稿なしで思いを述べ始めた子もいました。手を挙げられずに悔しい思いをした人もいたでしょう。この続きは、また次の機会として、この学習を積み重ねていこうと思います。

 こうやって自分を表現することを積み重ねていった中学生が、3年後にどのような成長を果たすのか、あらためて見てみたいと強く思いました。教育のめざす道しるべをどう描くか。それによって、育つ子どもの姿は、まったく違ったものになるのだと思います。 みなさん、大変よくがんばりました。

2022年05月17日