八万中学校2年生第3回学年全体人権学習

2023年11月10日(金)、八万中学校2年生第3回学年全体人権学習を行いました。今回は人権学習授業参観として、保護者参観での全体学習となりました。

会の冒頭、人権委員会からのお知らせがありました。それはこのメンバーが、どうすればこの学習が活性化するのか、どうすれば発表しやすい雰囲気をつくれるのか、アイデアを出し合い、考え合った結果でした。

班の中で手を挙げる役割の人を決める。手を挙げることも大きなハードルだから。

つづいて班員全員が立つ。一人で立つことも大きなハードルだから。

発表はできる人がする。何人でも構わない。

そんな提案の中で始まった今回の全体学習。

発問1 学年全体学習で今まで発表したことがある人は,発表したときどんな気持ちでしたか。(発言一部抜粋)

各班の共有

1-②「自分の意見を否定されたり,変に思われないかを気にしてとても不安な気持ちでした。でもそれ以上に感じたのは緊張でした。もちろん意見を否定される心配からくるものもありましたが,一番は失敗しないかどうかの心配からでした。いろいろな心配が募って,体も震えていました。でも発表したあとはスッキリしたし,意外と大丈夫だったなと安心しました。今考えるといい経験だったと思いました。」

1-③「自分は人権学習で何回か発表したことがありますが,人権学習以外で意見を学年全体の前で言うことが少なく,あまり慣れていないからそのぶんとても緊張してしまいます。言いたかったことをちゃんと言い切れなかったり,噛んでしまったらどうしようと思ったこともありましたし,実際そうなったこともありました。でもこのような場で発表できたら,達成感を得ることもできました。」

1-⑤「発表したときはとても緊張して,マイクが渡されたときは頭が真っ白になって,何を言うのか分からなくなるほどでした。発表していると,途中も紙がなければ分からないような状況で,発表の後も恥ずかしい気持ちになって,発表しづらくなるような感じでした。」

1-⑥「緊張して頭が真っ白になったり,すぐ噛んだりしました。自分の意見が他の子と違うかったらどうしよう,文章が変だったらと不安な気持ちでいっぱいでした。でも発表したら自信がついたり,達成感があってよかったです。」

1-⑦「発表する前までは,何を話すか分っていたのに,発表するとなった瞬間頭が真っ白になって,上手く自分の思いが口にできませんでした。日本語が変になったし,声も震えちゃったけど,発表した後は心からスッキリできたので,発表して悔やむことはないと思うので,みんなも発表してほしいなと思いました。」

そのどれもが、「みんな同じ気持ちだったんだ」と思わせてくれるような内容でした。

「だったら自分にも…」と思えるような雰囲気が、硬い表情を少しずつ和らげていきました。

発問2 これまでの人権・平和学習でどんな学びがありましたか。印象に残っていること,自分が感じたことを,「発表する」という行動の大切さを踏まえて伝え合いましょう。

2-⑩「誰かが発言しないと世の中は変わらない。全体学習でもそれは同じことだから,勇気を出して発表したいと思いました。おかしいことはおかしいと,間違っていることは違うとはっきり言える世の中にしていかなくてはならないと思いました。」

2-⑪「私は自分と照らし合わせるのが大事だと思います。他人事になるのではなくて,自分事にする。例えばハンセン病について学んだときに,もし私がハンセン病になったら,もし私の家族がなったらと考えながら学んでいくと,私はそのときの学びを忘れることはないと思います。人権・平和学習の発表をするとき,絶対何人かは発表して,残念ながら私はその何人かのうちには入れてないけど,聞いてるときも自分と照らし合わせて聞いていて,その人の意見と自分の意見が違うときに発表したくなるけどやっぱりできなくて。だから発表するということは勇気だなと感じました。」

2-⑬「人前で話すのはすごい苦手なんですけど,でも自分を知ってもらいたいと思って話してみることにしました。でもすごい伝えるのは難しくて,それでも勇気を出してしゃべってみたいなと思ってしゃべってみました。みんなに自分だけの色を知ってもらいたいし,発表することによって新しい気持ちが生まれると思うので,発表するという行動の大切さを,凄い今実感しています。」

2-⑭「これまでの学習で戦争もいじめも同じで,人のことを下に見る心をなくしていかないといけないと思いました。そのためにはまず第三者になって,注意する,先生に言うなど,行動に移すことが大事だと学びました。これまでの学習で12月に行く沖縄の地上戦のことが印象に残っている。「さとうきび畑の唄」では,殺したくなくても殺さないといけなかったり,死にたくなくても死んでしまった人がいて,なぜ罪もない人が戦争で死んでしまうのだろう,なぜ戦争をするのだろうと疑問に思いました。」

2-⑰「これまでの人権・平和学習を通して,自分の命が今普通にあって,この生活を送っていることの幸せを一番感じました。そしてその命でどう生きていくかとか,どんなことを学んでいくかとかの大切さを学びました。」

2-㉑「ボクは沖縄戦のことが印象に残っていて,突然住んでいるところが戦場になって,関係のない人たちまで殺されて,たくさんの人が死んでいくのが戦争で,とても悲しいことだと思いました。だからこのようなことを繰り返さないように,この人権学習の場で伝えていくことが大事だと学びました。」

2-㉒「私が一番印象に残っている平和学習は「さとうきび畑の唄」です。私はこのDVDで,今家族と毎日幸せにいられる大切さと,戦争でたくさんの人が犠牲になったことで,私たちが戦争について学び続けなければならないことを知ることができました。平和学習や人権学習で発表してくれた人たちのおかげで,いろいろな意見を聞けてたくさん学べたので,もっと発表していかなければいけないと思いました。」

2-㉔「人権学習でどんな学びがあったかっていうことで,さっきの1の質問にもつながるところがあると思うんですけど,自分が発表して座ったあととか,そのあとに,自分の意見に対して違う意見があったりすると,自分が不安になったり,そういう意見もあるんやって思ったりするんですけど。やっぱりそれが緊張とか重しにつながったりすると思うんですけど,それが一番大事だと思って。他の自分以外の考えを知ったり認めたりすることが一番大事なことなんじゃないかなって思います。」

2-㉕「私は吉成先生がおっしゃっていた,周りにあまえていないかという言葉が忘れられません。私はいつも他の人が発表してくれるだろうという他人任せな考えと,みんなの前で発表することへの勇気がなくて,発表しようかなと思ったことすらありませんでした。だから吉成先生の話を聞いたとき,自分はすごく周りにあまえているんだと気づかされました。自分で手を挙げて発表する勇気はないかもしれないから,自分が勇気がないからこそ,周りで発表してる人が本当に格好良く見えて,私も堂々と手を挙げて発表できるようになったらいいなと思いました。」

戦争や平和の問題と、ハンセン病問題やいじめ問題を重ねて考えられる子も出てきました。発表することと平和を築いていくことの関連性について話してくれる子もいました。家族と当たり前に過ごせる幸せを語ってくれる子もいました。それが、次の発問の語り合いにつながっていきました。

発問3 人権の尊重や平和の実現は,互いを知り合い,わかり合い,認め合うことからはじまります。私たちもそうであるように,あらためて自分自身を見つめなおし,これまで人に伝えられていない,悔しかったこと,悲しかったこと,人とつながれてうれしかったこと,今ある悩みについて語っていきましょう。

3-㉗「サッカーの新人戦のPK戦になったとき,チームの一人が外したんですけど,みんな悔しがっていたけど,その子を責めることはせずに,慰めていたことがありました。このような優しさが人の心を豊かにしていくと思います。」

3-㉘「チームで大会に出たときに,延長2回の接戦になったときに1点差で勝ってたんですけど,そのときこれまで意見を言い合って,お互い高め合ってきて切磋琢磨してきた仲間同士で勝てたよろこびっていうのをお互いに共有してうれし泣きしました。そのときこれまで以上にチームの友情が築けた瞬間だったかなと思いました。」

3-㉙「陸上の大会でも,相手と仲良くなることがあるんですけど,勝ち負けで仲悪くなることもないし,応援し合える関係になりました。失敗したことがあっても,周りの言葉で助けられたことも何度もあって,それは人とつながれて本当によかったと思いました。」

3-㉛「人とつながれてうれしかったこととはまたちょっと違うような気もしますけど。最近感動したことがあって。私には認知症の祖母がいるんですけど,その祖母の妹が,徳島に会いに来てくれるっていうので,私と母と父とその祖母の妹,大叔母が,祖母が暮らす施設に行ったんです。施設に着いたらゲストルームに通されて,そこで祖母に会いました。祖母は昔よりも変わり果てた姿で,昔よりすっかり老けてしまっていました。大叔母はそんな祖母に対してポンポンて肩をたたきながら,あーちゃん,あーちゃんて,祖母の名前がアキコっていう名前なんですけど。そう呼んでて。しばらくして,それまでもう何も言わなかったその祖母が,もう歯が抜けてるんで言葉という言葉ではないですけど,声をあげたんですよ。両親が言ってもそんなほとんど反応はないそうなんですけど。その様子を見て,私はちょっと涙ぐんでしまいました。施設の人は,昔のことはよく覚えているんですよっておっしゃっていました。変わらないものはない。すべてのものは変わってしまうんだみたいなことを聞きますが,この祖母と大叔母のような姉妹のような絆はきっと変わらないのだと思います。私もそんな変わらないものを大切にして,ていうか(学年をさして)この絆を変わらないものにして,それを大切にしていきたいです。」

3-㉜「学校の行事や祭りなどで,一緒に行こうと言ってくれる友達がいることが,学校に行こうと思う気持ちの支えになっているのかもしれないなと私は思っています。友達がいることで学校生活が楽しいと感じることがある反面,人間関係のことで悩んで学校に行きたくないと思う人もいるから,必ずしもそうではないのだなとも思いました。それでもその子が学校に来たときにみんなが笑顔で迎えてくれたら,ここにいても大丈夫かもしれないと感じるかもしれないし,この人なら自分の気持ちを伝えても大丈夫だと思える人ができて安心できるのかもと思いました。」

3-㉞「ボクが最近悩んでいることは,部活のことなんですけど,2年になって後輩ができたんですけど,練習中とかに後輩が何も言わんかったら動かんかったり,練習を言ったことと違うことしてたりしてて,どうやったら後輩たちに意味のある練習をしてもらえるんかなって毎日考えて悩んでいます。」

3-㉟「ボクが人とつながれてうれしかったことは,八万中学校人入学したとき,八南の子とつながれるか心配だったけど,つながることができたのでうれしかったことです。」

3-㊲「テストでいい点が取れないことが悩んでます。」

3-㊳「私は小さい時から親の仕事の都合でよく引っ越しをしてきました。この数年はここ八万地区で過ごしています。でも小学1年,2年と引っ越しをし,友達はできるのかな,仲良くしてくれるのかな,とずっと思ってきました。でも出会った友達は初めて見た私に対してやさしくしてくれて,教室の位置などをたくさん教えてくれ,とてもうれしかったです。そうやって友達の輪は広がっていくのだと思いました。またその学校から違う学校へ引越しをするときには,先生も含めて全員が泣いていて,私もつられて泣いたのを覚えています。私たち人間は人とつながりながら成長しているのだと思いました。」

3-㊴「ボクは昔,この身長のことで,同じ学年の子からいじめられ,蹴られたりしていましたが,中学校になってここに来てから,初めてボクをいじめることなく,嫌な目で見てくる友達もおらず,一番最初に初めてしゃべってくれた友達がすごくやさしかったことを今でも覚えています。これで発表を終わります。」

部活動での悩みや喜び、友達とのつながりや家族への想い。勉強することへの思い。転校を繰り返してきての想いや、いじめに遭ってきたことへの想い。これまで語られてこなかった様々な想いが溢れていきます。胸が熱くなりました。

そして、すべての班が発表を終え、全体にフリーでの発言を求めました。ここでも、今まで発言したことのない人から手が挙がります。

3-㊷「将来の夢が決まっていないことに悩んでいます。来年もう受験だけど,将来の夢によって高校が違ったりしてくるので,どうしようかなってずっと悩んでいました。自分が将来何かの仕事をやっている姿がうまく想像できなくて,ずっとどうしようと思ってきました。でも自分と同じ悩みを持つ人と出会うこともできました。自分と共通する悩みを持つ人とつながることができました。そして自分にはまだまだ可能性があって,諦めてはいけないということを知りました。悩みを持つことは,もう今は全然悪くないと思います。悩みを持つことがきっかけで,新しい出会いが自分と同じようにあるかもしれないからです。ありがとうございます。」

3-㊷「私は自分の意見を言うのが怖いです。今もちょっと怖いです。だから今まであまり発表できていませんでした。私は班で話し合うとすごく気持ちが楽になりました。自分でも発表した方がいいと思っていてもできませんでした。その自分が悔しくてたまりませんでした。だから今発表して,自分を成長させようと思いました。また担任の先生やクラスメイトから応援されて今発表ができました。だから発表することはクラスの子との友情,絆を深めることだとあらためて思いました。」

3-㊸「私には認知症のひいおばあちゃんがいます。そのひいおばあちゃんは,私が小さいころ多く面倒を見てくれていました。でも認知症になって,新しく気づいたことがあります。認知症になる前もやさしかったひいおばあちゃんですが,認知症になってよりやさしくなったと思います。認知症は神様からの贈り物です。だから皆さんも,おばあちゃんやおじいちゃん,近所の人とかにもやさしく接してあげてください。いつかその人たちの恩返しが返ってきますから。ありがとうございました。」

3-㊹悲しかったことを言うんですけど,中学校に入る前に,祖父が亡くなってしまって,厳しい人なんですけど,ちゃんとやさしいところもあって。でも厳しいところが多かったから仲良くできてなくて,できてませんでした。そんな祖父が,中学校の制服が見たいって言ってたんですけど,直前に亡くなってしまって,見せられなくて。お葬式の時に見せることになってしまって,それが悔しかったです。終わります。」

3-㊻「ボクの悩みはテストでいい点数がとれないことです。」

3-㊼「試合で負けたとき,とても悲しい気持ちになるときがあります。でもそんなとき慰めてくれた人がいます。そのときボクはとてもうれしい気持ちになりました。その思いは助け合うという思いがあったからできたものだと思います。そういう思いを増やしていきたいです。」

迫ってくる進路、励ましてくれる友達、認知症の曾祖母、入学直前に亡くなった祖父、部活動に期待すること、それぞれにそれぞれの思いが語られていきます。誰にも伝えることのなかった想いです。

その人の想いを知って、初めてその人と出会います。その人を知ります。そのつながりと積み重ねを繰り返していくことが、平和への道ではないでしょうか。いじめや差別をなくしていく道ではないでしょうか。そう強く思わされた時間でした。もし、世界中でそんな時間や場がもてたなら…。

世界では、ウクライナで、イスラエルで、尊い命が毎日のように失われています。世界中に届け、この思い、と思いました。

大きなことはできません。小さなことしかできませんが、その小さな一歩を感じた90分でした。

会の冒頭に人権委員会の発案を紹介しましたが、それは大成功でした。そういった経験や記憶は、これからの人生できっと、次のステップにつながっていくのではないかと思います。自分たちでつくりだしていくこと、主体的に取り組んでいくこと、トライ&エラーの繰り返しだということ。

何度も涙がこぼれそうになりました。こどもたちにも、私自身にも、素晴らしい経験となった時間でした。あとは、自ら歩く力をより確かにしていくことです。本当に素晴らしい授業でした。