人権こども塾vol15「東日本大震災」について

12月18日(日)、旧そごう9階の、新装オープンした青少年センターで、第15講を開催しました。

今回は、東日本大震災を中学1年生の時に体験した、宮城県東松島市出身の宮本萌(みやもとめい)さんからお話を伺いました。参加者は、中学生6人と大人3人でした。

まず、「22207」数字に見る東日本大震災。死者だけでなく、行方不明者や、震災後の関連死で亡くなった人の数だそうです。その数は、今も増え続けているそうです。20000人の死者。数だけだとぼんやりしてしまいますが、「20000件の事件」と捉えれば、途方もない数だということが伝わってきます。

宮本さんから、「4日間の孤立生活」の話が始まります。

学校終わり、突然、ただごとではない地震を感じます。

ぐにゃりとゆがむ街。

先生に大声で呼びかけられ、校庭の真ん中にぽつんと座り込みます。津波が来るなんて思ってもなかったそうです。

まだまだ寒い日中。武道館へ避難します。が、ほどなく訳も分からず3階音楽室へ。

途中に見かける自分の教室。教室の半分に押しやられた机やイス。机の下に隠れるなんて、無理。

本震のあとも、たびたび起きる余震。ずーっと揺れているような感覚。

そのうち、窓際にいた人から起こる、低く、重い、うめき声。そこに見えたのは、押し寄せる真っ黒な水の塊。引くことのない、「波」。カーテンの隙間から、ただただ茫然と見つめる、見たこともないような異様な光景。

一つの教室に1学年50人くらいが身を寄せ合う夜。すごく寒い。夜中、友達とトイレに行ったときに見えた、見たこともないきれいな星空。足元のグラウンドは海。周囲はすべて停電。漆黒の闇。遠くにかすかに見える、空襲のように赤く染まる空。非日常の、信じたくない景色。

2日め。1個だけのラジオ。それでも思うような情報は入らない。物資も入らない、孤立。食べ物も、飲み物もなく、家族の安否も分からず過ごす教室。元気だった友達もぐったりし、動く気も、やる気もなく、ただ、寝るだけ。先生から並ぶように言われ、開けるように言われた口に与えられたものは、水。霧吹きでワンプッシュの、水。

3日め。与えられたバナナ1本、パン1個を、友達と4人で分ける。地震発生時から口に入れた食料は、たったそれだけ。

4日め。母がいる避難所に移動。周囲より一段高い線路沿いを歩く。道端には小さい子どもの遺体。水の中を歩くときは、マンホールなどに落ち込まないよう、慎重に慎重に足元を確かめながら、一列で歩く人の列。やっとの思いで孤立生活から抜け出す。長い暗闇に、日常の光が差し込んだ瞬間。

5日め以降。祖父母を探し、凍てつく水の中を歩き回る。この時期の水は、20秒で足の感覚が分からなくなる冷たさ。3件目の避難所で、ようやく消息をつかむ。老人ホームにいることが分かり安堵する。

自分の家に帰る。そのことに特別感を感じたといいます。でも、たどりついた玄関先にあったのは、大事にしていた飼い犬の死骸。まさか、と思ってもみなかった現実に強いショックを受けたそうです。犬にもあった命。すごく悲しかったそうです。

厳しい現実を、思い出したくないかもしれない現実を、しっかりと伝えてくださいました。

そんな話だけではと、「東北は美しい」として、東北各地の名所も紹介していただきました。

また、「東北は美味しい」として、東北の美味しい食べ物も紹介していただきました。

海の幸、ぜひ食べてみたいものですね!

「中学生だからこそできること」

「釜石の奇跡」と言うけれど、奇跡ではなく、日ごろから備えてきた成果だそうです。

「率先避難者となりなさい」行動で示すことの大切さを話されました。

そのうえで、中学生が分かっておくべきこと。

①1日の半分は家族と一緒にいないということ

②もし学校で被災すると、大人は意外と少ないということ

③中学生は地域の道を知るプロだということ

④中学生は「学校」という避難所を知り尽くしているということ

参加者からも感想や質問、やりとりをして、最後に、死者を限りなく「0(ゼロ)」に近づけるために、できることをしておこうとお話いただき、3時間に及ぶ学習を終えました。

今回も本当に貴重な学びになりました。防災について学ぶことは大事ですが、そのなかに、共感性があってはじめて、本物の学びになっていくように感じました。

形だけではなく、「魂」を入れることの大切さです。

「知らないのに知っていたようにしていた」参加者からの感想です。

まったく同感です。知ったようなつもりになっていましたが、まったく間違っていました。まだまだです。

「知らないということを知る」

差別について学んだり、人権学習を進めていくといつも感じることです。そのことに気づくたびに、自分の小ささを知ります。でも、そんな自分は嫌いじゃありません。そして、もっと知りたいと思います。

次回第16講は、新年1月22日(日)、鳴門教育大学で、「LGBTQ+」について、SAG徳島のみなさんから対話的に学びます。どうぞお楽しみに!

さて、今年のこども塾はどうでしたか?新年残り少ない回数ですが、最後までよろしくね!

みなさん、良い年を!