2期vol16「徳島市鮎喰・識字問題」

今回も本当に凄い会となりました。感動の渦巻く会となりました。私は、こんな人たちと皆さんを出会わせたかったのです。

2月23日(日)、徳島市鮎喰教育集会所で第16講「識字問題」について学びました。参加中高生は、オブザーバー参加も含めて13人。

小雨降るなか、まずは毎週識字学級が開かれている老人ルームを訪れます。

ここは識字学級だけではなく、大浴場もあって、お年寄りが集う「憩いの場」にもなっているそうです。

また、これまでの歴史を感じさせる写真や品の数々もいたるところに飾られていました。

教育集会所に戻って、弘瀬(夫)さんから識字問題についてのお話を伺います。まずは「識字」という言葉すら聞いたことがない中高生。その言葉の持つ意味を知ることから始まります。

「識字」とは、単に文字を「知ること」だけではなくて、「識(し)ること」。つまり、よ~く「識(し)ること」。

塾生の皆さんには、「そんな当たり前のことを何言ってるの?」かもしれませんが、今も世界には、初等教育(小学校)を受けられない子どもが5000万人を超えていて、15歳以上の世界人口の7人に1人は非識字者だそうです。そのうち3分の2は女性であると同時に、アフリカ南部や南アジアに集中していて、女性問題や格差問題になっているということです。

国際的な取り組みが行われるなかで、日本でも1960年前後から、炭鉱労働者の開拓学校などの識字学級が全国に広がっていきました。

鮎喰でも、1968年におばちゃんたちが立ち上がります。学校に行けなかったのは、行かせなかった親の責任ではなく、差別がそういう状況をつくったから。つまり、差別が文字を奪ったと。1970年代に教育委員会に識字学級開設を要求し、識字学級ができるようになります。

「集会に参加してもメモもとれんので報告もできない」「バスの行き先も分かるようになりたい」「自分の住所と名前くらいは書けるようになりたい」「選挙にも行きたい」様々な思いのなかで、文字を、自分を、獲得していったそうです。

字を識ることで、「世間が明るくなった」と言ったおばあちゃんも。これぞ、識字学級!

自信と誇りの回復です。でも高齢でものを覚えることは、本当に困難なこと。記憶力との闘いです。だからこそ、明るく楽しくやるのだと言います。これは私たちの人権学習活動も同じだと思いました。差別をなくすことは本当に困難なこと。だからこそ、明るく楽しく!お菓子も!です。

このあと、塾生全員から思いや感想が語られ、後半の弘瀬(妻)さんのお話に突入。

高1に入学してすぐに受けた酷い部落差別発言。不登校に陥ったとき、支えてくれた大切な仲間の存在。母の偉大さ、その存在。社会問題を考える部落問題研究会への入部。徳島の大学に来てからの鮎喰識字学級生との出会い。識字学級生のなかには、家の米袋やふすまに、びっしりと自分の名前を書き連ねていた80歳のおばあちゃんも。そんな姿を通して、「部落出身でよかったー」と変わっていったと言います。

パンチのきいた、でも温かみのある弘瀬(妻)さんのお話につづいて、塾生全員が感想を語っていきます。

自分の意見を通していける人間でありたいと思った。部落出身でよかったと言うのを初めて聞いて、カッコイイなと思った。強いところも弱いところも受け入れて人間だと思った。生まれたところを隠す必要がはない。生まれたところを否定しないのはすごいこと。友達に少しでもいいからかかわりをもっていきたい。自分は先のことを考えて判断してしまうことがある。友達は人数ではなく、どれだけ信頼できるか。「つまらないことでしょげるな!」と言ったお母さんは強い。できてすぐの友達に言えることはカッコイイ。自分なら言えないと思ったけど、それを言えてすごい。流される方が自分のためと思ってしまうのは、世の中のことをまだよく知らないからなのだろうか。などなど。。。

最後に弘瀬夫妻からひとこと。

高1のときに部落差別発言をした子が一番変わった。同じ部落研で、同じ大学にも行って、部落差別を伝えた自分の祖母の部落差別意識を変えるまでになった。ムダなことは何一つない。すべてのことが、これからの人生でいつか役に立つ時がくる。

身の周りに識字問題はないように思っているかもしれないけど、よく見ればいろんな理由で文字を獲得できずに、理不尽な思いを受けている子がいるかもしれない。よく見ていてほしい。

もっともっと、何度も何度もお話を聞きたい気分になりました。

「部落に生まれてきてよかった、と言う人をはじめて見た」と言う塾生がいました。弘瀬さんもかつては、親を呪い、ふるさとを呪ったときがあったと言っていました。それでも識字生に出会い、変わっていったと。

皆さんがこれまで出会ってきた人(直接も動画も含め)もそうでなかったでしょうか。かつては隠したり、恥じたり、避けてきたけど、本当の意味でこの問題にちゃんと向き合うようになって、変わってきたと。部落に生まれたことを恥じることも隠すこともない、部落に生まれて本当によかった、この両親に生まれてきて本当によかったと、言ってなかったでしょうか。

カゲは逃げればどこまでも追いかけてきます。避ければどこまでもついてきます。でも、真正面から向き合えば、そのカゲは自分の中にいるもう一人の自分であったことに気づきます。自分を追い詰めていたものは自分であったことに気づきます。そのカゲすら愛することで、みんな変わっていったのではないでしょうか。

出会ってしまえば、知り合ってしまえば、「ゆずれない思い」が芽ばえます。それがある限り、もう皆さんは大丈夫です。たとえ流される瞬間があっても、何をどう考え、どうすべきかが分かっている皆さんは、ちゃんと戻ってこられます。それが試されるのが、それぞれの友達関係だったり、教室だったり、人権学習の場だったり、進学先だったりするわけです。自問自答です。

名残惜しいですが、次回はいよいよ最終回。2期生卒業式・2024年度閉講式です。3月20日(水祝)13:30~16:30、徳島県教育会館です。互いの記念色紙にメッセージを書き込むペンを持参しておいてください。