場所は徳島県立21世紀館イベントホール。時間は迫るのに、埋まらない会場。やきもきしながら、時計と会場を何度も目が往復します。
そんな私を横目に、出演するこどもたちは控室でパンを、ジュースを頬張ります。(笑)
時刻が来て、開会を告げるためにステージでマイクを持ちライトを浴びる私は、今までになく緊張しました。
一番に誰が口火を切るのか気になっているところに、ちゃんと発表原稿を用意してきてくれた子。助かり、救われた思いになりました。
「ナツノオト」の主人公渚と自分の境遇が重なると打ち明けてくれた子。これは、中学生集会に行き始めて初めて、自分の中の自分と向き合い、言葉にして出せたことを私は知っていました。言葉にするたびに、少しずつ強くなっていくように見えました。
こども塾に来てできた夢を語ってくれた子。水族館への夢を語ってくれたとき、会場で聞いていた21世紀館の館長さんはどんな思いで聞いてたんだろうと胸が熱くなりました。
「くりゅうらくせいえん」「じゅうかんぼうしりょうかん」漢字で書けば読むのも難しい栗生楽生園、重監房資料館。その一回しか話してない私の言葉、内容をちゃんと聞き取り、覚え、言葉にしてくれた子。黒尾さんは背筋が伸びたと言います。
小学校時代に体験した友達への差別に、何もできなかった自分を悔いていると打ち明けてくれた子。自分の中の自分と向き合うことなしに、この発言はありませんでした。
黒尾さんからのお話で、ハンセン病のことを詳しく学んでいきます。特に、「千と千尋の神隠し」に込められているのかもしれない、ハンセン病療養所の現実や、登場人物、一度出たら忘れてしまう「油屋」の設定。「名前を取られる」という現実。
木村さんからは、原発事故の実際、放射能汚染の現実と報道のあり方、現在の私たちの認識。そのなかで、今も帰れない人々の想い。「私は結婚してもいいんですか?子どもを産んでもいいんですか?」と言わしめている現実。最後に、すべてに「通底する問題」という宿題をいただきました。
誰にも言えなかった、身近な人への思いが語られます。どうすれば解決していくのか、自分はどう考え、どうすればいいのか。答えのない問いに、みんなが真剣に考えてしまう瞬間でした。
原発という問題をどう捉え、考えるのか。そのことにだって、果敢に挑む言葉が、姿がありました。タブーをタブーとしない、私たちの姿勢が垣間見えた瞬間でした。大切なことです。
会場から、不登校になっている中2の娘さんを想うお父さんの言葉がありました。胸が熱くなったし、目頭が熱くなりました。みんなが、いろんなところで、いろんなことに悩み、闘っています。そんなことが見えてくれば、人はもっとやさしくなれるのではないでしょうか。
当日、NHK松山放送局のクルーが取材で入っていました。木村さんへの取材のために。
それを聞いたとき、私に降ってきたのは、「魔法みたいに」という歌でした。
もしも二人が笑えるのなら つまらない恥や外聞なんて 泡にとかして消してしまおう 遥かな空に
もしも二人が笑えるのなら 醜い嘘や偏見なんて 砂の城のように崩してしまえ 遥かな海に
もしも二人が笑えるのなら 遠い遠い国で涙流す子の 涙の熱さを感じられるよ 握った手に
もしも二人が笑えるのなら 美しい時を謳えるのなら 欺く言葉に立ち向かえるよ 魔法みたいに
本当に素敵な、魔法のような時間でした。このときを私は、生涯忘れないでしょう。
こどもたちの持つ可能性は本当に素晴らしく、尊い。こんな時間を、空間を、もっともっといろんな場所に創っていければ。。。
みんなが笑える世界を、この手に創り出していきたい。今日も、明日も、今週も、来週も。魔法みたいに。