2期vol9「狭山事件」

9月18日(月)、人権こども塾は、徳島市応神町総合センター公栄会館で第9講を開催しました。

今回は部落差別「狭山事件について」、T-over人権教育研究所アドバイザー中山敏見さんからお話を伺いました。

今回はオリジナルメンバー9名に新メンバーの中学生4名を加えて、合計13名の開催となりました。

まずは徳島県勤労者福祉ネットワークにおける「あわーず徳島」の福利厚生サービスについて、働く人の人権にかかわるお話をしていただきました。そのあと、「人権」ということについて、「日常生活に普通にある当たり前のこと」として、肌の色や髪質を例にお話しいただきました。そして話は、この日のメインテーマ、「部落差別」へと進んでいきます。

2016年に部落差別解消推進法ができたものの、まだ十分な広がりをみせていないということ。同法を施行するに至った経緯として、SNSによる部落差別の拡散が大きな問題として起こったこと。勝手な決めつけで起こってしまう「みなし差別」など、あらゆる形で今も部落差別が残っているということ。

なかでも「狭山事件」についてお話をしていただきました。

狭山事件は、1963年に埼玉県狭山市で起きた高校生誘拐強盗殺人事件です。容疑者となった被差別部落出身の石川一雄さんは、無実を訴えつつも、一審で死刑、二審で無期懲役となり、1994年に仮出獄できたものの、現在も第三次再審請求をしているところで、いまだ無罪を獲得できずにいます。そんな内容の動画を見て、その後、日本の司法制度の問題点について考えていきました。

また、中山さんとの交流がある石川一雄さんの生い立ちや、そこにある部落差別の現実について、中山さんご自身の体験も含めて語っていただきました。

最後に、中山さんのお話から学んだことについて、一人一人が自分の言葉で思いや願いを語っていきました。

「世の中にはおかしいことがいっぱいあると思った」

「検察側が有利になっている制度はおかしい」

「警察は、本来、国民を守っていくものなのに、冤罪に加担するのことは許されない」

「被差別部落にしぼった捜査や人権無視の取り調べは許せない」

トップバッターの語りを届けてくれた高校生の言葉に、中学生12名の語りが響き合う中で、人権学習の醍醐味は、語り合いにあることを実感するひとときになっていきます。

国家公安委員長の「生きた犯人を挙げる」の大号令で冤罪を生んだ警察への失望を語る中学生に対して、語り合いを締め括った中学生が、「警察を一括りに、警察が悪いというのは、ジャーニー喜多川の性加害によって、ジャニーズ事務所に関わる全てのタレントを否定していくことに重なるのではないか」と思いを伝えていきます。

狭山事件を狭山の問題だけで見るのではなく、他の事象とも照らし、自分たちの身の周りの事象とも照らし、重ね合わせて考えることで、真に大切で新たな視点の獲得につながる。

それは中学生集会で吉成が最後に出した宿題の答えに近づいてるのかもしれません。

語りが語りを生んでいく人権学習は、どうやらみんなの内面を豊かにしてくれるようです。

この語り合いは、今回、人権こども塾の取材に来た徳島新聞の記者の質問、「人権こども塾に参加してよかったことは?」に対して、「物事を深く考える力がついたことです」と応える言葉にもつながります。

塾生13名の語りに思いを返してくれた中山さんの締め括りの言葉、「物事の本質を見抜き、おかしいことがおかしいと言える生き方」が心に染み込んでいく時間となりました。

次回は10月7日(土)「四国朝鮮初中級学校生」とのオンライン交流学習。その次は10月22日(日)「四国朝鮮初中級学校交流フェスタ」への参加。その取組に向けて、四国朝鮮初中級学校生に手紙を書きました。まだ見ぬ出会いに思いを馳せる塾生13名の手紙には、新たな仲間との出会いに思いを馳せる期待とよろこびが記されていました。